ご挨拶

皆様にはいつもKKRシミュレーション・ラボセンター(KS-lab)を御指導、御支援、御利用を頂き、誠に有難うございます。

KS-labは2006年4月に、国家公務員共済組合連合会(KKR)傘下の病院で運営されている共済医学会の研修施設として虎の門病院分院内に開所しました。以来、17年が経過しました。2019年には虎の門病院本院内に移転し、現在に至っております。開所にあたっては、前共済医学会会長の山口徹先生、初代センター長の中西成元先生による構想に始まり、移転に際しては、共済医学会会長の大内尉義先生、前センター長の井田雅祥先生をはじめ、KKR本部、KKR病院の皆様にご支援いただきました。感謝申し上げます。

虎ノ門は、東京のど真ん中にあり、新橋、銀座、赤坂、六本木などが徒歩30分以内、東京駅、浜松町駅など国内外のアクセスの玄関まで東京メトロで30分以内です。移転に際しては、開所からの医療の安全を確保するための研修教育に加え、災害対応、国際化に貢献する使命が与えられています。新たなKS-labは様々な研修が開催できます。また、ネット環境も整えられており、全国のKKR病院への同時配信が容易に質の高い画像と音声でお届けできます。研修記録のアーカイブは数年前からクラウドに保管可能になり強化されています。

また一方で、KS-labは災害拠点病院の救急医療センターと隣り合っており、災害時には、講堂とKS-labを一体化して災害医療を提供する基地となります。そのため、壁面に酸素や吸引装置などが豊富に用意されており、シミュレーション・センターでありながら、設備はすべて実使用が可能です。KS-labの運営スタッフは、共済医学会会長の大内尉義先生、運営委員長の門脇孝院長、総括の池田克彦副院長、ラボマネージャーの西原美和子師長、スタッフに救急科の医師および救命士、循環器センターおよび健康管理センターの医師、事務局に虎の門病院の事務職員を配置頂いています。

今回、100年に一度といわれる感染症による災害のコロナ禍が始まり、虎の門病院の非常事態宣言の発令に伴い、2020年4月より従来の全ての対面研修・シミュレーションコースを一旦中止し、KS-labは東京都新型コロナ疑い地域救急医療センターにエリアを提供することとなり、その間、KKRポータルサイトでの新型コロナ感染症診療に関する教育と情報提供、日本COVID対策ECMOネット・オンライン講習会の開催、TOKYO2020大会組織委員会・指定医療機関救急災害医療スタッフへのオンラインラーニング提供等を行っております。しかしながら、KS-labでは、連合会病院群の医療の質の向上・安全管理のミッションのために、withコロナ時代における「新しい研修様式」での教育コンテンツの提供、シミュレーション研修の実施を順次再開しております。

シミュレーション研修の中心となるアメリカ心臓協会(AHA)認定の心肺蘇生シミュレーション研修に関しては、病院機能評価や専門医認定等にかかわる研修として重要な位置を占めております。この研修を行う実働組織は国際トレーニング組織(International Training Center: ITC)とよばれますが、日本国内においては複数のITCがあり、必ずしも講習の質が担保されない状況も懸念されています。KS-labでは、AHAよりコースの質の高さを認められ、世界最高賞のAHA プラチナ賞を連続受賞している日本ACLS協会*のAHA BLS/ACLS心肺蘇生シミュレーション研修を定期開催しており、本年度も開催強化を予定しております。特に、シミュレーション研修のDx化、運営の効率化、研修の更なる質の維持のために、KS-lab公認のITCを正式に定める必要があり、令和5年3月8日開催の第72回共済医学会・第1回常任幹事会において、日本ACLS協会がKKR公認のITCとして正式に承認されました。近年、ITの進歩とともにHi-Fiシミュレーションの技術が発達しており、今後はこうしたシステムも利用して、全国のKKR病院を結んだオンライン研修や、オンサイト研修とのハイブリッド研修の提供を、日本ACLS協会との協同で進めることとなります。特にハイブリッド研修は、事前にオンライン学習を修了することで、会場での受講時間が短縮されるため、多忙な医療関係者にとって効率よく心肺蘇生法を習得できる画期的なコースとなっております。

全国のKKR病院のスタッフの皆様に貢献するとともに、多くの可能性を実現していきたいと考えております。新たにスタートする17 年目のKS-labにご期待ください。 なお、KKRシミュレーション・ラボセンター浜の町病院も福岡の地で研修を再開しております。

引き続きの御支援の程、どうぞ宜しくお願い申し上げます。

2023年4月
センター長軍神 正隆

*日本ACLS協会(https://www.acls.jp/public/dispatcher.php?c=Top

日本ACLS協会は、2002年に日本で初のITCとしてAHAと契約を締結し、以後、日本の心肺蘇生シミュレーション研修の祖として20年間の優れた教育実績があります。現在、全国に60 カ所のトレーニングサイト(コース開催するインストラクターの集まり)を有しており、BLS(一次救命処置)、ACLS(二次救命処置)、PALS(小児二次救命処置)、PEARS(小児救急評価処置)、一般市民向けハートセイバー・ファーストエイドCPR/AED等を定期開催し、AHA認定プロバイダー、インストラクターを日々養成しています。過去20年間の受講者総数は国内最多の約50万人、インストラクターの養成数も最多の約1万人に達し、世界有数の実績を積み重ねています。2014年からはAHAプラチナ賞を連続受賞しています。AHAプラチナ賞は全世界のITCの中で、受講生およびインストラクターに対して質の高い教育を実施しているITCに与えられる世界最高賞で、日本国内での受賞は日本ACLS協会のみであり、7年以上の連続受賞も世界初となっております。国内最多のプロバイダーを育成した実績と経験をもとに、資格取得のみならず、受講直後から臨床ですぐに役立つ知識と技術の習得を目的とした、科学的根拠に基づいたトレーニングを提供していることが、高く評価されています。

ヒポクラテスの木について

「ヒポクラテスの木」

当初シミュレーション・ラボセンターが設置されていた虎の門病院分院1号棟(現在は虎の門病院本院に移動)の前の庭に「プラタナスの木」があります。この木は、実がたくさん集まって4~5㎝の球状(集合果)となり、その球の3~5個が1つの軸に垂れ下がる様子が木に鈴を吊るした様に見えるため「すずかけの木」と呼ばれます。街路樹に多く見られ「すずかけの小路」「プラタナスの並木」等と称されるポピュラーな木です。分院にあるこのプラタナスの木が「ヒポクラテスの木」とも称されています。ヒポクラテスの木とは木の一般名ではなく固有名称です。ギリシャの大医学者、ヒポクラテス(前460~375)が弟子にその木の下で医学を教えたというギリシャのコス島にあるプラタナスの大樹のことを称します。この木に由来する木が「ヒポクラテスの木」と呼ばれ、現在日本には100本余りあるようです。それらは8つの系統株に分類され、すべて同じDNAを持っているそうです。当院のものは蒲原株系統で1969年新潟の整形外科医蒲原先生(日本医学史学会第9代理事長)がコス島で球状果を採取され、日本に持ち帰り播種し発芽させた中のものの1本です。緒方富雄博士宅に植えられたものが第2代院長冲中重雄先生に、分院開院10周年(昭和51年)記念にと贈られ現在に至っているものです。当院にとって冲中先生由来の大切な木です。虎の門病院本院の緑化整備後は株分けしたヒポクラテスの木が植えられる予定です。

「ロゴマークについて」

シミュレーション・ラボセンターの愛称である「ヒポクラテスクラブ」の由来となった、ヒポクラテスの木(鈴懸の木)をモチーフにした。4枚の葉はよく成長した状態を表わし、2つの集合果は、教育を受け将来多くの人が育っていくことを表わしている。ロゴマークは2種類用意した。ひとつはシミュレーション・ラボセンターのロゴマークであり、もうひとつはシミュレーション・ラボセンターへの参加者・有志のネットワーク会員が使用できるヒポクラテスクラブのロゴマークである。